『サクリファイス』 近藤史恵
2007年 10月 07日
自転車レースを題材にしたミステリー小説である。主人公が23歳くらいと若くて、読後感も爽やかなので、青春/スポーツ小説とも読める。
はっきり言って、自転車のロードレースなんてまったく知らないし見たこともない。自転車には乗りたいと思っているが、新しく購入する自転車を普通のママチャリにするか、電動アシスト付きにするかで大いに迷っているレベルである。
ま、しかしTARZANの読書欄で本書が取り上げられていて大いに興味をそそられて早速読んでみたのである。
『一瞬の風になれ』を読んで、すっかり陸上のリレーのことがわかったような気分になった私。
本書を読了してロードレースのことならなんでも訊いて頂戴状態になった、、、とは言い難い。が、ロードレースに興味をそそられたことは確かだ。もしテレビで中継されるならぜひ見てみたいと思った。あまりないらしいけれど。
しかし、自転車レース見てみたいという気にはなったし、小説自体もとても面白かったのだが、自転車ロードレース、(もしどんなスポーツでもこなせる人間に生まれ変わったとしたら)自分もやってみたくなったかと訊かれたら、答えははっきりしている。
「絶対にNO!」
読んでいて、「あーいやだいやだ、こんな世界」とずっと思っていた。
初めて知ったのだけれど、というか自転車ロードレースという存在そのものを意識したのがこれが初めてだからなのだが、この競技は個人競技のように見えてそうではない。ひとつのチームの中に、優勝を狙う選手とそれをアシストする選手というふうに完全に役割が分かれるらしい。賞金は分配されるが勝者として名前が残るのは先頭を切ってゴールした選手だけ。
もしチームのエース選手の自転車がパンクしたら、アシストの選手は止まって自分のホイールを差し出さねばならない。
これってマラソンで言うなら、優勝候補選手のシューズに穴が開いたら同じ実業団チームの他の選手を呼び止めてそのシューズを奪ってレースを続ける・・・みたいなもん? アシスト選手だって別に優勝してはいけないという決まりがあるわけではないのに。
こんな競技、私なら絶対耐えられない。仮に自分が優勝狙いのエース選手であってもだ。いや、もしそうなら余計にいやだ。他者(しかも苦楽を共にするチームメイト)を踏台にして平然とゴールするなんて。
そしてこの小説は、それがテーマである。タイトルのサクリファイス(犠牲)はアシスト選手の犠牲的働きのことでもあるし、そしてもうひとつ・・・おっと、これ以上は書けない・・・。このタイトルの二重の意味を知ったとき、感動が訪れる。うーむ、よく出来た小説である。
主人公の「ぼく」(=白石誓)は(たぶん)23歳、自転車を始めて6年目くらいになる。高校まではインターハイで優勝するほどの陸上中距離選手だったが、トップでゴールすることの意味が見つけられずにいたところ、「トップでゴールする必要のない(者もいる)競技」である自転車ロードレースと出会う。
実業団チームの先輩エース石尾は以前に平然と他の選手を潰したという噂がある。その先輩といつぶつかるかわからないナマイキな同期、伊庭。そんな不穏な空気を感じながらも主人公・誓はアシストをこなすことに喜びと面白さを見出していく。
最後にすべてが明らかになると、ある登場人物に抱いていた印象が、がらりと変ってしまう。だから思わず再読せずにいられなくなった。
そして主人公である誓も好ましい。好ましいというか、三人称で語られていたとしたら相当かっこいい奴だ。一人称なのでその点はぐっと控えめに描かれているが。
はっきり言って245ページの本書は短すぎてその点だけは物足りなかった。『一瞬の風になれ』のように3分冊とまではいかなくても、もっと主人公の日常とか、物語とは直接関係のないディテイルを書き込んで欲しかった。もっと誓が知りたくなった。
続編希望!
はっきり言って、自転車のロードレースなんてまったく知らないし見たこともない。自転車には乗りたいと思っているが、新しく購入する自転車を普通のママチャリにするか、電動アシスト付きにするかで大いに迷っているレベルである。
ま、しかしTARZANの読書欄で本書が取り上げられていて大いに興味をそそられて早速読んでみたのである。
『一瞬の風になれ』を読んで、すっかり陸上のリレーのことがわかったような気分になった私。
本書を読了してロードレースのことならなんでも訊いて頂戴状態になった、、、とは言い難い。が、ロードレースに興味をそそられたことは確かだ。もしテレビで中継されるならぜひ見てみたいと思った。あまりないらしいけれど。
しかし、自転車レース見てみたいという気にはなったし、小説自体もとても面白かったのだが、自転車ロードレース、(もしどんなスポーツでもこなせる人間に生まれ変わったとしたら)自分もやってみたくなったかと訊かれたら、答えははっきりしている。
「絶対にNO!」
読んでいて、「あーいやだいやだ、こんな世界」とずっと思っていた。
初めて知ったのだけれど、というか自転車ロードレースという存在そのものを意識したのがこれが初めてだからなのだが、この競技は個人競技のように見えてそうではない。ひとつのチームの中に、優勝を狙う選手とそれをアシストする選手というふうに完全に役割が分かれるらしい。賞金は分配されるが勝者として名前が残るのは先頭を切ってゴールした選手だけ。
もしチームのエース選手の自転車がパンクしたら、アシストの選手は止まって自分のホイールを差し出さねばならない。
これってマラソンで言うなら、優勝候補選手のシューズに穴が開いたら同じ実業団チームの他の選手を呼び止めてそのシューズを奪ってレースを続ける・・・みたいなもん? アシスト選手だって別に優勝してはいけないという決まりがあるわけではないのに。
こんな競技、私なら絶対耐えられない。仮に自分が優勝狙いのエース選手であってもだ。いや、もしそうなら余計にいやだ。他者(しかも苦楽を共にするチームメイト)を踏台にして平然とゴールするなんて。
そしてこの小説は、それがテーマである。タイトルのサクリファイス(犠牲)はアシスト選手の犠牲的働きのことでもあるし、そしてもうひとつ・・・おっと、これ以上は書けない・・・。このタイトルの二重の意味を知ったとき、感動が訪れる。うーむ、よく出来た小説である。
主人公の「ぼく」(=白石誓)は(たぶん)23歳、自転車を始めて6年目くらいになる。高校まではインターハイで優勝するほどの陸上中距離選手だったが、トップでゴールすることの意味が見つけられずにいたところ、「トップでゴールする必要のない(者もいる)競技」である自転車ロードレースと出会う。
実業団チームの先輩エース石尾は以前に平然と他の選手を潰したという噂がある。その先輩といつぶつかるかわからないナマイキな同期、伊庭。そんな不穏な空気を感じながらも主人公・誓はアシストをこなすことに喜びと面白さを見出していく。
最後にすべてが明らかになると、ある登場人物に抱いていた印象が、がらりと変ってしまう。だから思わず再読せずにいられなくなった。
そして主人公である誓も好ましい。好ましいというか、三人称で語られていたとしたら相当かっこいい奴だ。一人称なのでその点はぐっと控えめに描かれているが。
はっきり言って245ページの本書は短すぎてその点だけは物足りなかった。『一瞬の風になれ』のように3分冊とまではいかなくても、もっと主人公の日常とか、物語とは直接関係のないディテイルを書き込んで欲しかった。もっと誓が知りたくなった。
続編希望!
by wumingzhi
| 2007-10-07 22:30
| 読書