『一瞬の風になれ』 佐藤多佳子
2007年 06月 19日
上・中・下の三巻。これを購入するとき一瞬、「とりあえず今日は上巻だけ買おうかな」という考えが頭をよぎったが、思い直して3巻とも買って本当に良かった。
とにかく結末が知りたくてページを繰るのももどかしい。しかしこの物語が終わってほしくない、永遠に読み続けていたいという矛盾。
高校で陸上を始める少年が主人公の青春小説である。
青春小説というと、主人公の恋やら悩みやら、いろいろ出てきそうである。が、この小説はそうではない。もちろん気になる女の子の存在や、天才サッカー選手である兄への複雑な感情・・・いろいろあるけれど、それらは脇筋にすぎない。とにかく陸上、短距離についての小説である。それはもう、潔いと言っていいくらいに。文体は軽くて親しみやすい語り口だが、内容は骨太なのだ。
下世話な人間である私は始め、主人公の新二と親友の連が(どちらも男子だけど)そういう関係になるんじゃないかと思っていた。だから連に女の子のカノジョができたりしたときはちょっと意外な気がした。私は毒されているなあと思った。だからこの小説がまぶしかった。
この小説はそういう下世話方面はほとんど無視で、ひたすら陸上オンリーと言っていい。
陸上の経験のなかった少年が、ふとしたきっかけで高校で陸上部に入部することとなる。潜在能力はあるが短距離のことを何も知らなかった一人の男の子が高校3年間(というか2年数ヶ月だけれど)を経て部長にまでなる。その間の心や体の成長が丁寧にじっくり書き込まれているので、読んでいるほうもなんだかすごく短距離走について詳しくなった気になる。主人公たちと一緒に成長して行っているような錯覚に陥るほど。実際、これを読んだら自分も「一瞬の風」になって走れるような気がしたくらいだ。
私が人並みの運動神経があってもう一度高校生をやり直すとしたら、今度は運動部に入ってみてもいいなあと読後思った。こんなふうに何かひとつのことに打ち込める人がうらやましい。
私はクラブ活動には中学高校を通じて(ついでに言うと大学もだが)ほとんど参加したことがない。一人の時間が好きだった。一人で読書したり音楽を聴いたりするのが好きな暗い少女だったのだ。でもこの小説の登場人物たちのような青春を過ごしていた人もいるんだろうなあと思うと、それもいいなあと思えてくる。
とにかく結末が知りたくてページを繰るのももどかしい。しかしこの物語が終わってほしくない、永遠に読み続けていたいという矛盾。
高校で陸上を始める少年が主人公の青春小説である。
青春小説というと、主人公の恋やら悩みやら、いろいろ出てきそうである。が、この小説はそうではない。もちろん気になる女の子の存在や、天才サッカー選手である兄への複雑な感情・・・いろいろあるけれど、それらは脇筋にすぎない。とにかく陸上、短距離についての小説である。それはもう、潔いと言っていいくらいに。文体は軽くて親しみやすい語り口だが、内容は骨太なのだ。
下世話な人間である私は始め、主人公の新二と親友の連が(どちらも男子だけど)そういう関係になるんじゃないかと思っていた。だから連に女の子のカノジョができたりしたときはちょっと意外な気がした。私は毒されているなあと思った。だからこの小説がまぶしかった。
この小説はそういう下世話方面はほとんど無視で、ひたすら陸上オンリーと言っていい。
陸上の経験のなかった少年が、ふとしたきっかけで高校で陸上部に入部することとなる。潜在能力はあるが短距離のことを何も知らなかった一人の男の子が高校3年間(というか2年数ヶ月だけれど)を経て部長にまでなる。その間の心や体の成長が丁寧にじっくり書き込まれているので、読んでいるほうもなんだかすごく短距離走について詳しくなった気になる。主人公たちと一緒に成長して行っているような錯覚に陥るほど。実際、これを読んだら自分も「一瞬の風」になって走れるような気がしたくらいだ。
私が人並みの運動神経があってもう一度高校生をやり直すとしたら、今度は運動部に入ってみてもいいなあと読後思った。こんなふうに何かひとつのことに打ち込める人がうらやましい。
私はクラブ活動には中学高校を通じて(ついでに言うと大学もだが)ほとんど参加したことがない。一人の時間が好きだった。一人で読書したり音楽を聴いたりするのが好きな暗い少女だったのだ。でもこの小説の登場人物たちのような青春を過ごしていた人もいるんだろうなあと思うと、それもいいなあと思えてくる。
by wumingzhi
| 2007-06-19 17:00
| 読書